ES細胞のデータ捏造論文
今年5-6月に米科学誌「サイエンス」に掲載された黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大教授の論文が実は捏造データに基づくものであったことが暴露されて、韓国内に留まらず大問題になっている。
黄教授研究グループの一人ミズメディ病院の盧聖一(ノ・ソンイル)理事長は、「幹細胞は存在しない」と宣言し、「黄教授に提供した卵子の総計は、およそ880個」「185個の卵子を利用して11個の幹細胞を作製した」という黄教授の主張と違うことを暴露した。盧理事長は一昨年7月から今年2月にかけ、黄教授に約1200個の卵子を実験用として提供したとを明らかにし、黄教授がES細胞作製に成功していたとしても「1000分の1程度の低確率」で、「黄教授は写真だけではなく、データもすべて偽造していた」と暴露した。黄教授の不祥事を暴露し始めた理由について、「黄教授から昨年、『あなたは何もしていないが、私がスターにしてやった』といわれた時から心は離れていた」と語り、一連の黄教授の釈明に対しても「我慢ならない」と改めて反発したという。また、米・ピッツバーグに派遣されている黄教授チームのメンバーの研究員(34)は、サイエンスに掲載されたES細胞11株の写真について「黄教授の指示で、2株の細胞を1株と偽って私が写真を撮った。論文は虚偽のものだった」と証言した。ウル大の調査委員会は23日に中間調査結果を発表し、暴露された事が事実であることを確認した。
ソウル大学の最高位関係者は、「調査委員会の調査範囲は、2005年度のサイエンス誌に掲載された論文、2004年度のサイエンス誌論文、クローン犬スナッピーなどまで拡がるだろう」と述べ、同関係者は「ソウル大学の調査委員会には懲戒提案権も付与された」とし、「調査委員会の活動が終わり次第、学則などに違反したことが判明した教授を含む研究者に対しては、まとめて懲戒措置が取られるものと見られる」と述べた。さらに、ソウル大学の調査委員会は2005年度のサイエンス誌論文の真偽、黄教授研究グループの2004年度のサイエンス誌論文、今年8月公開された体細胞クローン犬「スナッピー」、1999年誕生したクローン牛「ヨンロンイ」の順に調査を進めることが分かった。
朝鮮日報によれば、黄教授の重要な研究成果には、いつも予想できない「アクシデント」がついて回っているという。
<<以下朝鮮日報から>>
もっとも最近発生した事故は、黄教授研究グループが2005年、サイエンス誌に論文を提出する2か月前の1月9日、犬の飼育場からカビが飛んできて培養していた幹細胞6個が死滅したというものだ。2004年3月12日、サイエンス誌への発表論文を準備していた際にも、研究室で4時間の停電事故が発生した。黄教授は2004年6月、寛勳クラブ(中堅記者による言論研究・親睦を目的とした集まり)でのシンポジウムで、「2003年秋に停電事故が起き、およそ100個の細胞群(コロニー)のうち2個だけを残してすべて死んでしまったことがある。再び実験を成功させる自信がなくて、 安圭里(アン・ギュリ)教授に明日、葬儀場を予約してくださいと冗談を言った」と述べた。しかし、朝になって黄教授が確認した結果、奇跡的に2個の細胞の固まりが「すくすく」と育っていたという。
1999年誕生した国内初のクローン牛のヨンロンイは、論文がそもそも存在しなかった。 黄教授は、「それ(論文)をどこかに出しても、掲載される可能性もないから」と述べた。普通はクローン牛を作製する過程ではDNA分析資料であるマイクロサテライト(Microsatellite)で外部の検証を受けるが、これさえも行わなかった。黄教授は、「こうなることがわかっていたら大切に保管していたものを…」と述べた。
◆黄禹錫教授の主な業績と事故
日時/業績・発生事故/
1993年/国内初の試験管内授精子牛を生産/
1999年3月/クローン牛ヨンロンイ生産/論文未発表・DNA分析資料紛失/
1999年4月/体細胞クローン韓牛(韓国産牛)チンイ生産/
2002年8月/形質組み替えのクローンブタ生産/
2003年秋/研究室4時間停電で細胞コロニーが死滅/
2004年2月/サイエンス誌への論文発表(1本目)/
2005年1月/カビ汚染で幹細胞6個が死滅/
2005年5月/サイエンス誌への論文発表(2本目)/
2005年8月/ネイチャー誌への論文発表(クローン犬スナッピー)/
<<以上引用終わり>>
黄教授は、ノーベル賞候補とも噂されていた人物で韓国の英雄だったらしいが、韓国の科学水準に対する信頼性を失墜させたばかりか、この分野の研究そのものに対する信頼性を揺るがすことになり、影響はかなり大きいようだ。科学者は1回でもデータを偽造したらその時点でもはや永久に科学者ではなくなる。それ以前の研究成果も評価はゼロになるだろう。しかしそれを見破ることは非常に難しい。黄教授は品性にかなり問題がある人物のようで、そこから亀裂が生じて捏造が暴露されたが、普通は関わった人間も同罪になるから内部告発によって明らかになることはあまりない。だから全く別の研究者による追試が必要なのだが、結果が正しければ追試は只の二番煎じであって初めての報告に比べて評価は著しく低い。したがって、単なる追試は普通はやらないのである。実験方法が面倒であればあるほど、最初に報告したもの勝ちということになる。限りなく怪しげな、あるいは明らかな捏造論文もいくつか知っているが、たいして価値のある研究でもないし、クズの相手をするだけ時間の無駄と思う。しかし、当の人物が研究についてしたり顔で話しているのを見るのは胸くそが悪い。
【追加】
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/20/20051220000021.html
の朝鮮日報の記事を見るともっとはっきりした証拠が上げてある。
<<朝鮮日報から引用>>
疑惑は「サイエンス誌論文に掲載された1番体細胞クローン胚性幹細胞の写真Dとミズメディ病院の1番受精卵胚性幹細胞の写真Bの一角が完璧に重なる」というものだ。ある幹細胞研究者は、「栄養細胞や点の模様まで完璧に重なり、一つの培養皿(シャーレ)にある幹細胞を撮ったものとしか思えない」と主張した。
(2)2004年度の黄教授研究グループ論文と2003年度ミズメディの国内論文?
2004年度サイエンス誌論文に掲載された他の写真B、Dも、ミズメディ病院研究グループが、国内で発行する英文ジャーナルである『モレキュール・アンド・セル(Molecule and Cell)』に掲載された1番の受精卵胚性幹細胞B、E写真と同じだ。
ミズメディ病院のモレキュール・アンド・セル誌の論文は2003年11月25日に提出され、12月17日に掲載が認められた。ステムセル誌の論文は2003年11月24日に提出され、2004年5月5日に掲載が認められており、黄教授研究グループのサイエンス誌論文は2003年12月9日に提出され、2004年2月4日に掲載が許可された。
論文の提出時期もミズメディ病院が先であるが、各論文に掲載された1番受精卵胚性幹細胞は、すでに2002年度の論文として発表されたものだ。2003年提出された2つの論文は、この幹細胞と他の幹細胞などを比較する内容だ。
<<引用終わり>>![]()
【追加2】
韓国政府はこれまで70億円もの研究費をこの教授に与え、さらに次年度20億円を追加する予定だったらしい。韓国ならその5倍位の法外な研究費だ。評価能力がないのでこの詐欺師の本性を見抜けなかったのは当たり前なのだろうし、ノムヒョン大統領の政治的な手腕を見ていても頚を傾げるところが多いが、それにしても、韓国のレベルを露呈したことには変わりないだろう。政治の世界の話だったら適当に取り繕えたのだろうが、科学の世界でをつき通すことはできないということだ。
【追加3】
産経新聞は、この詐欺事件の背景を次のようにまとめている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051224-00000001-san-int
<<ここから>>
世界まであざむく結果となった“黄教授騒動”の背景については(1)韓国でよく見られる成果や業績を急ぐあまりの拙速(2)国際的な配慮や慎重さを欠いた視野の狭い「やっちゃえ」主義(3)政権の業績にしたい政府の過剰な期待と支援(4)「やった、やった!」あるいは「ウリナラ(わが国)最高!」的な世論の愛国主義−などが複合的に重なった結果といわれる。
<中略>
世論が一色となって異論、異見を許さない雰囲気になるのだ。“反日”のような外交、政治問題はもちろんとして、今回は冷静な学問的判断が求められる科学分野にまでそれが広がった。事件の反省点として「過剰な愛国主義」も挙げられている。
<<引用ここまで>>
残念ながら日本にもそういう風土があると言わざるをえない。
【追加4.20051230】
12月29日にソウル大調査委員会が、残りの2株と、論文提出後に作製したとされる5株について検査した結果、体細胞提供者のDNAと一致せず、偽物と結論づけた。7株はいずれも共同研究者が経営する病院で作製された細胞と判明した。現在まで患者組織から作製されたES細胞は一つも確認されておらず、作製したことを示すデータもないとしている。結局この黄教授は全く無いものから論文をでっち上げた訳である。
これは極めて深刻な問題を露呈した。第一に、完全な捏造論文を出す研究者がいるとい事実、第二に、権威ある雑誌SCIENCEであっても捏造論文を見抜けず掲載してしまうという事実、第三に、これまでの論文のどれが信頼できないのか見分けがつかないこと、である。膨大な数の論文が捏造でないかを再チェックするなど不可能なことだ。
【追加5.20051231】
東亜日報は、同大調査委員会関係者の話として、2004年2月の論文で世界で初めてヒトクローン胚から作製したと発表した胚性幹細胞(ES細胞)についても偽物であることを示す1次分析結果が出た、と報じた。昨年の論文も虚偽となれば、黄教授はクローン技術を応用してES細胞を作製する技術すらなかったことになる。
なんだ、ただの詐欺師だったということか。もう書いてもしょうがないので、これでやめよう。
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